もうひとつのドラゴンクエスト2 没イベント再現画像




ファミコン版のドラゴンクエストIIは、当初の構想で予定されていた多数のイベントが、ハードウェアの制約のために削られてしまいましたが、後に刊行された関連書籍や雑誌記事で、削除されたイベントや設定の一部が明かされています。当エントリーでは、その情報に基づき再現画像を作成しました。ファミコン版のドラゴンクエストIIに思い入れがある方なら楽しんで頂けると思います。

それでは「もうひとつのドラゴンクエストII」をご覧ください。






イベントシーンの一枚絵


まず残念だったのは、見せ場には紙芝居的に大きな絵を入れるという企画。
当初の予定では入るはずで、すでに絵のデータがあがっていたのに、最終的にはやっぱりメモリに余裕がなくなり、ボツになってしまったのだった。
たぶん、気づいている人は少ないとは思うが、『ドラクエⅡ』の説明書の物語のところに、それらの絵のうちの1枚だけが、ひっそりと写真になって載っている。
もちろんファミコンの画面写真であり、本当はカラーだ。

たとえば船の財宝、当初の設定では、大灯台の上からロンダルキアを一望すると、ロンダルキアの台地の絵が出て、さらにそのむこうの海の1ヵ所がキラキラと光っている。つまり船の財宝はそこにあり、財宝に関してそういった情報を人々に話させるシナリオにしていたが、大きな絵がカットされた時点で、シナリオも変更してしまったのだった。


堀井雄二「ドラゴンクエスト2ができるまで(後編)」ファミコン通信 '87年7月10日号


安野(CGデザイナー):一番大きかったのは、ストーリーや場所を説明する、一枚絵が全然入らなかったこと。ゲームの取扱い説明書の6ページに、ローレシアの城の中の絵があるでしょう。王様とか王子様とかいるやつ。あれが実は、画面写真なんです。あんな絵が10枚くらい入る予定だったんですけどね。


「ドラゴンクエストII 制作スタッフ座談会」『ファミコン神拳奥義大全書特別編 キム皇の110番』





取扱説明書に掲載されているイラストとオープニングメッセージの合成画像(表示される予定だった一枚絵はカラー)
堀井雄二曰く「すでに絵のデータがあがっていた」とのことだが、他の一枚絵が公開される日は来るのだろうか。



大灯台の最上階。紋章を手に入れるイベントでは「灯台」である必要性が薄いので、やはり一枚絵の表示を前提として「大灯台」と名付けられたと思われる。この場所で画面が切り替わり、白銀の世界であるロンダルキアの大地を一望できたのだろう。




サマルトリア城の場所


じつをいうと、最初、サマルトリア城は現在の湖の位置にあったのだった。
しかし、そこは、宿屋のあるリリザの町からあまりに遠い。ここは仲間とふたりになってから来るようにしよう。サマルトリア城をリリザの町にぐっと近づける(『ドラゴンクエストⅡ』のLPレコードが発売されていますが、なんとジャケットの裏に、湖に囲まれている城の写真が出ています。これが実は初期のサマルトリア城。ジャケットの撮影が比較的早めに行われたためジャケット写真は初期のバージョンのものになってしまったのでした。興味のあるキミはレコード屋さんで見てみてください)。
そんなわけでサマルトリア城をリリザの町に近づけたのはいいけど、それだけだと、せっかくの湖が何も意味をなさなくなってしまう。というか、こっち方面に来る必要がなくなってしまう。
せっかく地形までつくったのに、それはもったいない!
というわけで、元サマルトリア城の位置には洞窟を置いたのだった。


堀井雄二「ドラゴンクエスト2ができるまで」





(左)当初予定されていた位置にあるサマルトリア城 ※再現画像
(右)製品版では城の代わりに「湖の洞窟」が配置された

ローレシアの王子ひとりで「リリザの街」から「湖の洞窟」の場所まで行くのはかなり大変なので、サマルトリア城の位置が元のままだったら、序盤で投げ出すプレーヤーが続出したに違いない。




風の塔の最上階にラーの鏡



堀井:ラーのかがみも、最初は風の塔にあったのですが、ほらあの塔のてっぺんの宝箱に入ってたんです。でも風の塔は3人じゃないとキツイので、変更しました。


「ドラゴンクエストII 制作スタッフ座談会」『ファミコン神拳奥義大全書特別編 キム皇の110番』





(左)風の塔の最上階の宝箱に「ラーの鏡」※再現画像
(右)製品版ではからっぽ

ムーンブルクの王女を人間の姿に戻す「ラーの鏡」が風の塔にあるということは、当然、ローレシアの王子とサマルトリアの王子の二人だけで塔の強敵に挑むことになる。マンドリルやリザードフライの大群に苦しめられ、やはり途中で投げ出すプレーヤーが続出したと思う。




ミミック



『鳥山明の世界展』図録より、ドラゴンクエストIIのモンスターイラスト。
IIの時点で既にミミック、オクトリーチ(ドラゴンクエストVで登場)が描かれている。



『Wii ドラゴンクエストI・II・III 特典お宝資料』
堀井雄二(または宮岡寛)による、ミミックのラフスケッチ。ドラゴンクエストIIの開発時の資料として収録されている。



ドラゴンクエストIIの宝箱を開けてミミックが出現した場面の再現画像。IIのダンジョンには、開けると毒に侵されるワナ入りの宝箱が配置されているが、元々はミミックが入っていたのではないだろうか。
IIには「インパス」が無いため、ミミック入りの宝箱を避ける事ができず、ダンジョンの深い階層で開けてしまった場合は、激怒のあまりゲームを投げ出すプレーヤーが続出しまくったと思う。




ローレライの岬


“オリビアの岬”はIIでボツったものが復活!! まったく同じじゃないけどIIでは“ローレライの岬”っていうイベント名だったんだ。前回はメモリーの都合でボツ。で、今回(ドラクエIIIで)めでたく登場したというわけ。

「堀井雄二のドラゴンクエストQ&A」『ドラゴンクエストIII マスターズクラブ』JICC出版局,1988年





「ローレライの岬」という名称は「ローレシア」と関わりがありそうなので、ローレシア北端の岬とほこらで再現画像を作成した。セリフはドラゴンクエストIIIの「オリビアの岬」のメッセージを引用。




エンディングの舞踏会


さらにエンディングも、もっといろいろやるはずであった。
王位につき王座にすわると、いろんな人々が1人また1人と王座のもとにヒザまずいては祝辞をいって帰って行く。
そして最後は、あでやかな舞踏会が開かれるとか……。


堀井雄二「ドラゴンクエスト2ができるまで(後編)」





この舞踏会のイメージは、ドラゴンクエストVのエンディングシーンとほぼ一致する。果たして、どういうキャラ同士の組み合わせでダンスを踊らせようとしたのだろうか……。




おいのりをする



Q ドラクエIIとIIIには教会が各所にありますが、開発途中の画面を見ると「おいのりをする」とゆーのがあったのですけど、このコマンドを実行するとどんなことになるハズだったんですか?

A そうなんだよね、「おいのりをする」ってゆーのは、毎回出てくるんだけど、いつのまにか消えちゃうね(笑)。これも、メモリーの関係で、しかたなくけずられているんだ。メモリーがたりなくなってくると、まっ先にきられちゃうんだよね。開発中は、いつも入れてるんだけど、他の「生き返らせる」や「毒を消す」に比べると、それほど重要じゃないからね。どうしてもけずられちゃうみたい。
おいのりをすると、ちょっとイイことがある、ハズだったんだ。具体的に何が起こるかまでは、ちょっと教えてあげられないんだけどね。ひょっとしたら、今後の作品で使うかもしれないから、その時まで楽しみに待っててくれないかな。


「堀井雄二のDRAGON QUEST Q&A」『ドラゴンクエストIII マスターズクラブ』





「ファミコン神拳奥義 ドラゴンクエストII独占スクープ!!」『週刊少年ジャンプ '87年3・4合併号('86年12月9日発売)』より、ドラゴンクエストII開発中の画像。
「おいのりをする」はドラゴンクエストIIIでも教会のコマンドとして用意されていたが、再度ボツとなった。



再現画像。ドラゴンクエストIV以降のセーブコマンドとは違い、オマケ的な選択肢だったらしい。モンスターが宝箱を落としやすくなるといった効果があったのかもしれない。




「しのオルゴール」と「みみせん」



「しのオルゴール」「みみせん」の削除を指示した仕様変更書


・耳せんをなくしたため 道具屋の売り物から耳せんをはずす。
・ザハンの町(町(?))宝箱のひとつを からっぽに。
 (死のオルゴールが入っていた物)
・モンスター別アイテムで リザードフライに「耳せん」が出るので これを「ふくびきけんに」
・その他、もし、宝箱で「耳せん」が指定されているものがあったら、「キメラのつばさ」とかに変更してください。

堀井雄二「ドラゴンクエスト2ができるまで」


“小さなメダル”とか“死のオルゴール”ってゆーのは、あったんだけど、途中メモリーの関係で無くしちゃったアイテムなんだよね。
ちなみに“死のオルゴール”は戦闘中に使うと、その場にいる全員が死んじゃうってゆー、すごいアイテムになるハズだったんだけどね。

『ドラゴンクエストIII マスターズクラブ』






製品版のカートリッジでも、特殊な復活の呪文を入力すれば「しのオルゴール」「みみせん」を所持した状態で再開することができる。ただし、「しのオルゴール」を使用しても効果はなく、「みみせん」を使用するとなぜか「ゴールドカード」のメッセージが表示される。また、「しのオルゴール」「みみせん」は、ドラゴンクエストIIIにもデータのみ残されている。



「しのオルゴール」はザハンの町の宝箱で入手できる予定だったらしい。「せいなるおりき」の反対側にあり、製品版ではからっぽになっている。「みみせん」は道具屋で購入できる予定だったらしいが、状態異常を防ぐ「まよけのすず」のように、アイテム欄で身に付けられる道具だったのではないだろうか。




いずれも再現画像。
普通に「死のオルゴール」を使うと、敵味方ともに即死して全滅となるが、「みみせん」を装着していると回避可能。ただし、その場合は「しのオルゴール」「みみせん」を組み合わせるだけで楽にゲームを進められてしまうので、「みみせん」で即死を回避できる確率は低めに設定されていたと思われる。




サマルトリアの王子の病気イベント

SFCのリメイク版で追加されたイベントだが、ファミコン版の開発時から構想があったらしい。



アイディア草案
(パターン3)

宿屋に泊って、朝起きると
パーティーの1人が寝たままになっている。

「おはようございます。
おや? つれのかたは
どうしました?」



「もしかして ごびょうきでは?
それはいけませんな」



「このまちの ひがしに いしゃがいます。
そのかたに みてもらっては
いかがでしょうか」

このあと、「世界樹の葉」をもってくるまで(P)は この宿で
寝たままになっている。
話しかけると、

「ぼくは もうだめです。
どうか ぼくのことなど きにせず
たびをつづけてください。う…、ごぼっごぼっ」

とかしか いわない。


『ファミコン&スーパーファミコン ドラゴンクエストI・II・III 特典お宝資料』





ファミコン版ドラゴンクエストIIで、サマルトリアの王子が病気になるイベントが起こった場合の再現画像。
リメイク版では「ハーゴンに呪いをかけられた」というセリフが用意されているが、ファミコン版開発時の仕様書では病気で倒れるという設定だったようだ。




あぶないみずぎ


しょーもないところでは“あぶないみずぎ”というアイデアもあった。
これは“ミンクのコート”と匹敵するもので、やたら値段が高くて、それを3人目の王女に買ってあげて着せると本当に画面上のキャラクターが“あぶない水着姿”にかわるというもの。
ただし、友だちからその話を聞いて、「えへへ、オレも買ってあげよう」とうれしがっても、キャラクターの名前によっては、買ってあげても、「イヤよ。こんなの着られないわよ!」と着てくれなかったりして……。


堀井雄二「ドラゴンクエスト2ができるまで(後編)」




ドラゴンクエストII(MSX版) あぶないみずぎ (動画リンク)
https://www.youtube.com/watch?v=cjlSMGVEXJA

MSX版ドラゴンクエストIIでは、ムーンブルクの王女があぶないみずぎを着用した際に一枚絵が表示されるイベントが用意されているが、上記の堀井雄二の発言から察するに、ドラゴンクエストIIIと同様にフィールド上のキャラクター(16×16のドット絵)の姿が変わる予定だったのではないかと思う。



キャラクターのドット絵を差しかえた再現画像。セリフはMSX版を参考にしたが、「こいつは さいこうだぜ!」の順序を入れ替えた。



(左)あぶないみずぎを装備していると、一定の確率でモンスターが見とれて行動しない時がある。シドーも例外ではない。 ※MSX版の仕様に基づく再現画像
(右)ムーンブルクの王女に着用を拒否された場合の再現画像。王女の名前によっては、このような悲劇もあり得たらしい。




没モンスター「まだらぐも」




「ファミリーコンピュータMagazine 1987年No.2(2月6日号)」に掲載された広告より。発売日直前に発行された雑誌の広告であるにも関わらず、製品版では出てこなかったモンスターの画像が使われているということは、開発終了直前までデータが残されていたらしい。鳥山明が描いたイラストも、どこかに埋もれているのかもしれない。
「まだらぐも」のほかにも「サウルスロード」「テンタクルス」が登場する予定だったが、ドラクエIIでは見送られたものの、続編タイトルでめでたくお披露目となった。




ローレシアの王子が刺殺されるバッドエンディング


それは、サマルトリアの王子が犠牲となって、最後の敵を倒すというものである。
目的は果たしたが、もはやサマルトリアの王子は戻らない。
彼の冥福を祈りながら、キミはムーンブルク王女と2人で帰路に……。
お城では人々が待ちかまえ、キミたちの偉業を心から称えてくれる。そして、一大セレモニーが開催される。
と、その時!


堀井雄二「ドラゴンクエスト2ができるまで(後編)」





下記エントリーでバッドエンディングを再現しているので、興味のある方は御一読下さい。

ドラゴンクエスト2 幻のバッドエンディング さようならサマルトリアの王子
http://dragonquestage.blog.fc2.com/blog-entry-42.html




付記――他の没ネタ、そして「ドラゴンクエスト」の「完全版」とは何か 


再現画像は用意できなかったが、呪文「ウフラム」(ニフラムの原型? 製品版に名称のデータのみ残されている)、キャラクター「ジョギングおじさん」(堀井が書いた仕様書に記載されている)といった、製品版では削除されてしまったネタがある。また、ムーンブルク城からドラゴンの角へ向かう途中にある砂漠にオアシスの街が設置される予定だったらしい。(ソース未確認)





では、完成品として発売された「ドラゴンクエストII」は、ハードウェアの制約によって、未完成な状態で世に送り出されてしまったのだろうか。

ドラゴンクエストに限らず、当時のゲームソフトは情報量が限られていたがゆえに、それぞれのプレーヤーが自由に世界像を構築できたという側面もある。ゲームを「完成」させるのはあくまでもプレイヤー自身であり、実現しなかったエピソードに想像を巡らせるのも、プレイヤーに与えられた楽しみの一部である、と付言しておこう。




参考資料

「ドラゴンクエストII 制作スタッフ座談会」『ファミコン神拳奥義大全書特別編 キム皇の110番』ホーム社,1987年.
http://dragonquestage.blog.fc2.com/blog-entry-35.html

堀井雄二「ドラゴンクエスト2ができるまで(後編)」ファミコン通信 '87年7月10日号
http://dragonquestage.blog.fc2.com/blog-entry-81.html
http://dragonquestage.blog.fc2.com/blog-entry-41.html

「堀井雄二のドラゴンクエストQ&A」『ドラゴンクエストIII マスターズクラブ』JICC出版局,1988年

『鳥山明の世界』(イラスト展図録)1994年

『ドラゴンクエスト25周年記念 ファミコン&スーパーファミコン ドラゴンクエストI・II・III』2011年

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素晴らしい記事でした。

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