ファミコン通信 '87年4月17日号 ドラゴンクエスト2ができるまで(前編)






ファミコン通信 '87年4月17日号
ドラゴンクエスト2ができるまで(前編)



堀井雄二自身の筆によるエッセイ。DQ2の製作過程、開発秘話が詳細に語られている。

堀井の単行本『虹色ディップスイッチ(アスキー 1990年)』にも同エッセイが収録されているが、当エントリーではファミコン通信に掲載された文章をそのまま転載する。

なお、下記のブログでも同記事が転載されており、当方が原文を参照して若干補足した部分もあるが、大半の文章をそのまま利用させて頂いた。


さよならファミコン通信 堀井雄二書き下ろし『ドラクエ2』秘話・前編
http://sayonarafamitsu.blog.fc2.com/blog-entry-271.html
http://sayonarafamitsu.blog.fc2.com/blog-entry-272.html
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『ドラゴンクエストII』ができるまで
堀井雄二がゲーム作りの秘話を公開っ!! 裏話・前編

文/堀井雄二 イラスト/土居孝幸







空前の超ウルトラ大ヒットゲームとなった『ドラゴンクエストII』。その異様な人気の秘密は、いったいどこにあるのか。今回は、『ドラゴンクエストII』のシナリオ(ストーリー、キャラデータ、会話データ、マップデータなどすべて)を制作した堀井雄二氏にターゲットを当て、その真髄にせまってみたいと思う。
(なお、マル秘生原稿1~7はいやがる作者、堀井雄二氏をむりやり説得して掲載させて戴きました。とくに重要な部分は、見えづらくしていますので、なるべく見ないようにしてください)



パーティープレイ採用がまず最初に決定された


『ドラゴンクエストII』が、ひと月遅れでやっと発売になった!
この原稿が本に載る頃には、もうかなりの人たちが解き終えているかもしれない。
まずは、ありがとうございます。
おかげさまで『ドラクエII』は発売日に行列ができるなど、かなり話題にのぼり、実際にゲームをした人たちから返ってくる反響も、なかなか好評のようです。
――と、これは今だからいえるセリフであって、じつをいうと、発売前日まではスタッフ一同、かなり不安だった。
というのも、『II』はパーティープレイの要素をとり入れたため、操作が『I』よりもめんどうになってしまっているし、キャラクターによって使えない武器や防具があるとか、装備の概念を理解しなくてはならないとか……。
パソコンのロールプレイングでは当たり前のことだけど、ファミコンユーザーがいったいどこまでついてこられるか?
ヘタをすると、めんどくさい! と投げ出す子供が続出しないかと、かなり不安だったのだ。
では何故、その不安を抱いてまで、パーティープレイをとり入れたのか?
話は『ドラクエII』の企画がスタートした昨年4月までさかのぼる(『I』の発売日は昨年5月。なんと! ゲームが4月初旬に完成、その製品化発売を待たずして、『II』の企画に突入したわけである)。
いうまでもなく、初代『ドラゴンクエスト』は、ファミコンユーザーというRPG未経験者にむけた入門用ゲームであった。
このゲームを足がかりに、多くの人々にRPGの魅力を知ってもらい、その段階を経て、より高度なRPGに挑戦してもらおうという意図が、スタッフ一同にあった。
とすれば、次の段階としての『II』は、やはりパーティープレイでなくてはいけない。
なぜなら1対1の戦闘は理解しやすく入門用としてはもってこいだが、反面、どうしても戦闘が単調になってしまうという宿命にある。
戦闘が単調だと、レベルをあげるという作業は苦痛でしかない。
複数対複数にすれば、それだけ戦闘がバラエティーに富み、いろんな作戦が必要になってくるのだった。
なかには、これを「めんどくさい」と思うプレイヤーもいるかもしれない。しかし、RPGに魅せられた人には、その「めんどくささ」が「楽しさ」につながるはずだ。
パーティープレイ採用が決定した!








パーティーは3人 経験値は24ビット!


パーティープレイが決定してから、さらに細かな打ち合わせに入る。
会議のメンバーは『I』のチームとまったく同じ。
チュンソフトの中村光一くん、そして安野くん。ボクの友人でログインで執筆していたこともあったデューク宮岡くん。エニックスの千田さん。そしてボク。
この誰もがRPGに一家言を持っていて、しかも皆、恐ろしく頑固者ぞろいである。
意見が2分するなどまだいいほうでヘタをすると5分し、ちょっとしたことで4、5時間以上も大議論することなどはざらなのだった。と、これは余談。
ともかくパーティープレイが決定して、パーティーを何人くらいにするかを話し合う。
これには、画面表示の問題もあるし、復活の呪文(パスワード)の長さの問題もからんでくる。
というのも、例えばパーティーが5人いるなら、その5人をすべて画面上に表示したかった。
パソコンゲームでは5人いても画面上では1人が代表して移動するなどのシステムがよくあるが、それはパソコンユーザーだから許されるのであって、ファミコンユーザーには許されないと判断したからだ。
モンスターにしても、8匹いるならそのすべてを見せ、やっつけるたびに1匹ずつ消してゆきたい。
1対1の戦いから、いきなりパーティープレイにしたわけである。せめて "見た目" でもそれがわかるようにしなければ、あまりに不親切というものだ。と、こう考えたわけ。
で、画面表示には当然ファミコンのハードの問題がからんでくる。
ファミコンのスプライトは横に8つ(『ドラクエ』のキャラの大きさなら4人ぶん)が限界なのだ。それ以上並べると9つめが消えてしまう。
消える所をまわしてチラつかせるという方法もあるが、あまりチラつくとやっぱりしんどいであろう。
ということを考え、パーティーは3人とした。3人であれば、横に並んで町の人に話しかけても合計4人だから表示可能である。








限られたメモリをどう割り振るか?


で、3人とした場合の『復活の呪文』の長さを試算する。
『I』では経験値を6万5千(16ビット)で切ってしまったが、レベル設定がかなりキツかったので、今回は24ビットあてることにした。
ゴールドは前回どおり16ビット。さらに持っているアイテムも覚えておかなければならない。
例えばアイテムが63種類あるとすれば、1人8つまで持てるとして、これに必要な入れ物は6×8=48ビット。
そして4文字の名前に24ビット。
合計112ビットで、これが3人ぶんだから336ビット。復活の呪文に使用する文字は64種類(6ビット)だから単純計算すると、これだけで56文字になってしまう。
しかも、これプラス、装備しているかどうかのフラグや、各種ストーリーのフラグ、そしてチェックサム(注1)などなど、とてつもなく長いものになってしまうだろう。
これは、あんまりである。
というわけで、例によって中村くんがあらゆる手を駆使し、最短19文字、最長でも52文字におさめることに成功した。
どーして56文字以上のものが19文字になってしまうのか?
これには理由がある。
『I』では1人ぶんを操作していたのに『II』ではいきなり3人、というのも、コマンドがかわっていることもあり、あまりにとまどうのじゃないかと、まず1人の操作に慣れてもらい、次に2人、さらに3人と、段階を踏む方法を考えていたわけ。
それが、仲間を見つけるというストーリーになってしまったわけだが、1人のときは1人ぶんの復活の呪文でいいじゃないか。
で、人数が増えると呪文も長くなってゆく、というように、こっちも段階を踏むものにしたわけ。
と、いろいろあったが、3人パーティーということに落ち着き、次に戦闘や移動モードのシステムの打ち合わせ。
さらに、イベントなどの特殊効果(各種アイデア)が実現可能かの検討、などを煮つめてゆく。
それが終わると、いよいよメモリマップの試算である。
「今まで話したことを実現するにはプログラム××K(注2)は欲しい」と中村くんがいえば、キャラをデジタライズにする安野くんが「モンスター用に××Kは必要だと思う」と主張。
ボクはボクで、「マップやセリフデータとして××Kはもらわないとね」。
限られたメモリをどう割り振っていくか?
それはあたかも、国会の予算委員会の様相を呈してくるものだった。

※注1:にせもののパスワードがOKにならないためにつくる、コンピュータ用のチェック。
※注2:1Kというのは1024。1キロのことだ。1Kビットなら、1024ビット=128バイト。1Kバイトなら、1028バイト=8224ビット。約8Kビットとなる。








シナリオメイキングがついにスタートしたぞ


システム、メモリマップが決定されると、いよいよ作業はシナリオとプログラムの分業態勢へと入ってゆく。ここに至ったのが企画をスタートさせてからおよそ2ヶ月後、去年の7月初旬頃だったろうか。
その時点を境にして、それまでの会議につぐ会議が一転し、シナリオに関するデータを作成してはプログラム担当の中村くんに渡すという作業が開始される。
ちょっと話がそれるが、最近、人に「ゲームのシナリオって、いったいどういうふうに書くんですか? あらすじだけを書くんですか? それとも、プログラミングのソースリストまで書くんですか?」
などという質問をよく受ける。
これが映画のシナリオだと、どういうふうに書かれているか想像できるけど、ゲームのシナリオとなると具体的にどういうふうに書かれているのか想像できないので、ぜひ知りたいというのだ。
単に好奇心で聞いてくる人もいるし、なかには「もし自分にもできるようなら、やってみたい」という気持ちで聞いてくる人もいる。
今、この原稿を読んでいるキミたちのなかにも、「将来、ゲームのシナリオライターになりたい」と思っている人がいるかもしれないので、そんな人たちのために、シナリオ部分の作業工程を具体的に書いてゆこうと思う。
もし、これを読み、「ああ、ゲームのシナリオって、そういうふうに書くのか。それならボクにもできそうだな」
と、思えてもらえたら幸いである。
まずシナリオを何に書いているかというと、ボクの場合、A4の5ミリ方眼紙を使っている。人々のセリフなど普通の原稿用紙でもかまわないのだけど、マップやデータをかくこともあるので5ミリ方眼紙が使いいいのだ。
セリフは原稿用紙に、マップは方眼紙に、という方法もあるが、それだと紙のサイズや質が違って、整理のとき美しくないので、セリフなども同じ方眼紙に書くようになったわけ。








メインの地上マップのラフコンテから作成!


というわけで、シナリオづくりが始まった。
シナリオづくりのメインスタッフはボクとデューク宮岡くん。
まず、モンスターのラフコンテを作成する。これは本当にラフコンテで、モンスターデザインを担当する鳥山明氏にイメージを伝えるためのものである。そんなわけで、このときまだ、モンスターの正式名称も、強さなどのデータも決まっていない。
それらは後日、鳥山くんのほうから絵があがってきたとき、実際にモンスターの絵を見ながらイメージし作成することにした。
モンスターデザインを発注したあと、マップの作成に入る。
いうまでもなく、おおまかなストーリーはすでに頭の中にできあがっている。
そんなものいつつくったんだ? と思うかも知れないけど、「おおまかのストーリー」というのは、いわゆる「あらすじ」のことで、これは映画やマンガのあらすじを考えるのと、ほぼ同様に頭のなかの作業である。これについての工程は省かせてもらった。
ドラマのあらすじをどういうふうに思いつくのか? その方法論を説明しろといわれても、ちょっとむずかしいであろう。
また、そんな方法論など説明しなくても、誰でもお話のあらすじなど考えられると思う。
問題は、その「あらすじ」を、どういうふうにしてゲームのシナリオにしてゆくかなので、今回はそっちの部分をメインに書いてゆきたい。
話がそれた。
マップの作製である。
これは白地図みたいなもので、これに城や町、洞窟、塔などをかきくわえてゆく。
そして頭のなかにあるストーリーに合わせて、どの洞窟でなにが見つかるか? あるいは、どんなイベントがあるか? どんな情報が聞けるか? などを書きくわえてゆく。
そのコンテができあがると、いよいよ本格的なマップの作製である。
5ミリ方眼紙を使い、城、町、あるいは洞窟、塔のマップを作製する。
そして、どの場所にどの種類の人がいるかの指定。宝箱の指定。あとでセリフを書くため、番号をつけておく。












締め切りの11月頭に完成はしたのだが……


それと並行して、メインのフィールドマップをつくらなければならない。
フィールドマップは256×256(注1)。紙にかくのは大きすぎるし、そのマップを見ながらデータを打ち込む作業も大変すぎるので、これだけはパソコンを使って作製している。
次作のスクロールマップエディタでフィールドの地形をつくり、それをディスケットにセーブして中村くんに渡すのだ。
ちなみに256×256だと、これだけで64Kになってしまうが、中村くんのほうではこれを圧縮(注2)するプログラムを作製。なんと8K弱におさまってしまったのだ!
さて、マップが終わると、人々のセリフである、マップ上の人々には整理番号をつけてあるので、その番号でセリフを書いてゆく。
状況によって違うセリフを話す場合は、その指定もしておく。
いろんな遊びなどが入れられるので、このあたりがいちばん楽しい作業だ。
特殊な動きをする人についてもその動きなどを指定しておいたが、中村くんによると、今回それらのイベントがいちばん大変だったという。
というのも、1コ1コは特殊処理でデータを圧縮できず、しかもプレイヤーがどの方向から話しかけるかで、そのキャラの動くべき道をふさぐこともあり、その場合の処理まで考えてプログラミングしなければならなかったから(興味のある人は、そういう特殊なキャラに、いろいろ方向を変えて話しかけてみてください。彼の苦労がうかがい知れると思います)。
で、人物についての指定が終わると、各種アイテムの指定。
具体的にいうと、その効力とか値段、使った場合のメッセージなどを書いてゆく。
さらに戦闘中のメッセージなども並行して書いてゆく。
それらがすべて終わると、いよいよモンスターデータの作製である。
鳥山くんのほうから、すでに絵ができあがってきている。その絵をみながら最終的なモンスター名を決定し、さらに中村くんのほうと打ち合わせずみの書式にしたがって、モンスターのパラメータを決定してゆく。
と、ここまでで、すでに10月に突入していた。もし予定どおり年内に発売するのであれば、11月頭がデッドラインである。
スタッフ一同、ほとんど眠らない日々が続き、11月はじめ、ついに完成! だが、しかし!

(続く)

※注1:256×256キャラ。256という数字だと、横32バイト(256ビット)でぴったり表現できるから、便利なのだ。
※注2:たとえば絵のデータなど、普通なら表現するのに700倍と必要なものを、テクニックを使って500バイトほどで表現してしまうことを“圧縮する”という。反意語は“展開する”。









この本文は、月刊ログイン4月号、5月号の「虹色ディップスイッチ」を再掲載したものです(編集部)。




後編のエントリーはこちら

ファミコン通信 '87年7月10日号 ドラゴンクエスト2ができるまで(後編)
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コメント

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