'87年 テレビゲーム 電子遊戯大全 中村光一インタビュー


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テレビゲーム 電子遊戯大全 TV-GAMES

テレビゲーム・ミュージアム・プロジェクト編 '88年5月30日発行


インタビュー 中村光一 (要約)

(このインタビューは87年8月10日にチュンソフト社にて行なわれた)





アマチュアの時代も含めると、プログラマーとして僕は8年やってきたことになります。数学同好会に入り、先輩にコンピユータについて教えてもらったのが、この世界に入ったそもそものきっかけでした。1年の秋には、信号の入力ツールのプログラムをI/Oというパソコン専門誌に投稿してみたところ入選し、初めて原稿料というものを手にしました。これはお金になるな…と思いました。しかし、この点ではゲームのプログラムをやった方がもっと条件が良いように見えたので、それ以後は業務用ゲームを真似たものを幾つかつくっては、投稿していたんです。そして、高校3年のときには、エニックスのコンテストで賞を頂くことができました。以後今までには、「ドアドア」、「ニュートロン」、「ドラゴンクエスト」シリーズを制作してきました。チュンソフトを設立したのは84年の4月です。他の会社とはちょっと違った名前にしようということで、僕の高校時代のニックネームの「チュン」から社名を付けました。



ゲームの共同制作には、それぞれのスタッフのよいところを加算した合計以上の効果が生まれるというメリットがあります。お互いどうしの刺激がよい方向に働くと、1+ 1 + 1が9にも10にもなるのです。一方、個性の潰し合いになりかねないというデメリットも勿論あります。ですから共同制作では、各スタッフのよいところをバランスよくまとめてゆく、プロデューサーやディレクターの存在が重要になってくるのです。「ドラゴンクエスト」の制作では、各自プライドを持った人間が、それぞれ責任のある箇所を担当する立場から後に退かずに意見を言い合いましたので、些細に見えるようなことでもすぐにもめました。しかし、片方が相手を説き伏せて意見をまとめてゆくということは、僕達の聞ではあり得なかったので、実際にゲームがよい方向にできあがってゆく過程で皆が納得してゆく、という良い形で制作が進みました。結局、堀井さんもすぎやまさんも僕も、皆とことんゲーム好きであることが、この共同制作をうまく速ばせた一番の理由だと思います。



一般的に言うと、プログラマーはエンジニアです。但し、僕自身はアーティストです。ゲーム業界はまだ若く、完全な分業化がなされていません。ゲームのプログラマーは、単なるプログラムだけをするに終わらないので、アーティストだと思うのです。(87年) 4月からは僕自身はプログラムをせず、社長業と監督にあたっています。作業の効率がアップした点はよいのですが、時々僕は実際にプログラムにちょっと手を出してしまいたくなるのです。そんなときにも、僕はトータル・ディレクションの立場にあるんだ、
ということで、キーボードに触らせてももらえないんですから嫌になっちゃいますね(笑)。



僕にとってテレビゲームとは、大きな目で遊びというものを捉えたときの、そのうちの一つなのです。時代を越えて人々に遊ばれてゆくゲーム、単なるブームで終わらないゲームをつくれたらとても嬉しいですね。「ドラゴンクエス卜」シリーズにしてもファミコンにしても、ブームの中のものでしかなく、今に違う遊びやメディアが出てくるような気もします。ですから、僕は麻雀を素晴らしいゲームだと思うんです。人と人とのかけ引き、運、スリル、分析と予想、など、様々な要素が備わっていてとても奥が深い
うえに、ゲームをしながらあれこれと話しができて、友達どうしの親しみも増してゆくからなんです。遊びはやはり、コンピュータ・プログラムを相手にするよりも、人聞を相手にするものが一番面白いですね。そして、沢山の人間で遊べば遊ぶほど楽しいです。「ハビタット」や「メガ・ウォーズ」など、ネットワーク・ゲームも遊んでみたいと思っています。



作家では筒井康隆氏が好きです。映像ではなく文章であんなに人を笑わせることができるのは、もの凄いことだと思うんです。テンポの速さ、凝ったディテールについても、傑出しています。一緒に仕事をしてみたい気もしますが、ゲームづくりに関わるのならばやはりゲーム好きの方でないと困りますので、その辺筒井さんは如何なものなんでしょうか…?





(以下管理人)

残念ながら筒井康隆とのコラボレーションは実現しなかったが、筒井氏の小説に対する「映像ではなく文章であんなに人を笑わせることができる」という視点は、後のサウンドノベルに繋がる要素になったのかもしれない。


余談だがこのインタビューが載っている『テレビゲーム 電子遊戯大全』は異様に凝った装丁・構成の書籍であり、日本のみならず黎明期の海外ゲームも大量に掲載しており、非常に希少価値が高い。






これ、分かります? ページが上中下に分割されていて、上がゲーム論文、中が関連人物・団体、下がゲーム紹介と、それぞれ分かれているんですよ。つまり、上の記事を読んで知らない人物の名前が出てきたら、下のページで調べることができるという、いわゆるハイパーリンクを意識した構造になっているんですね。これなら読書が捗ると思いきや、ページがめくりにくくてかえって読みづらかったです


なお堀井&中村以外にも、すぎやまこういち、宮本茂、遠藤雅伸らのインタビューも収録。海外勢においてはノラン・ブッシュネルやティモシー・リアリーとか凄いメンツも名を連ねる。糸井重里や浅田彰も寄稿している。
こちらのサイトで目次を紹介している)


おそらく日本初の本格的なゲーム論の書籍だと思われるので、歴史的意義を鑑みて、どこかの出版社で復刊してくれませんかね。普通の装丁でいいから。

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